ルリユール 

 

ルリユール/reliure はフランス語で広く「製本」を意味する言葉ですが、日本ではおもに手でつくられる工芸製本「Reliure d'art」のことをいいます。

仮綴じの刷り本を手作業で糸でかがり、表紙をつけ、装飾して「本」にしあげます。

西洋の書物は、ながらく折丁を束ねて簡単に糸でかがって冊子にしたものを、本文紙よりすこし厚い表紙を糊付けしただけの「仮綴じ」の状態で出版、流通されていました。製本は運ばれた土地の本屋や読者に任されていたので、同じテキストでも所有者、地域によってさまざまな製本が施されていたのです。

写本時代から印刷時代にかけて、製本は紋章や各時代によって特徴のある様式の製本スタイルや模様が施されて、テキストの内容と関連するものではありませんでした。しかし、19、20世紀になると表紙も内容にあったデザインで装われるようになり、デザイナーと製本、箔押しの高度な技術を持つ職人たちで作られた多くの芸術作品が生まれました。

「本はルリユールされてはじめて完成する」という言葉があるように、フランスをはじめとするヨーロッパでは文学、詩集、版画の入った本など、少部数ではありますが仮綴じや未綴じの状態で本が出版されています。国立図書館や愛書家が製本家にルリユールを発注、収集することでルリユールの伝統を見守っているようです。

 

明治時代、日本に西洋の製本術が導入された時には、すでにヨーロッパでも製紙、製本の機械化が進行、版元製本が始まっていた時期でもあり、ルリユールの習慣は広がらなかったようです。近年注目されているルリユールは、昭和の時代に海外でその技術を学んできた先達がその魅力の普及を重ねてきた成果でもあります。

中世から現代の工芸製本まで、基本的な製本構造は綴じつけ製本ですが、現代では古今東西の古典や技法が研究され、活用され新たな形が生み出されています。

糸でかがった本は読みやすさだけでなく、その本の寿命を確実に延ばすことができます。

手書き、印刷、デジタルの時代にも対応する手でつくる穏やかな技術、それが現代のルリユールです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


綴じつけ製本

本文を糸綴じするときに麻紐や革の支持体を用い、表紙ボードにその支持体を通して表紙と本文ブロックを一体化してから、革でくるんで表紙をつける製本方法。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くるみ製本

表紙をあらかじめ表装材でくるみ、別に作った本体と主に見返し紙で接着する製本。

 

 綴じつけ製本の各部名称